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主なシャントトラブルとその対処法

主なシャントトラブルとその対処法|東京都中野駅すぐの下肢静脈瘤・透析シャントの日帰り手術|東京中野血管外科クリニック -下肢静脈瘤・透析シャント-

主なシャントトラブルとその対処法 ~「いつ受診すべき?」がすぐわかるガイド~

1. はじめに:シャントトラブルは早めの対処が大切です

血液透析を続けていくためには、シャント(内シャント/バスキュラーアクセス)がとても重要です。
シャントとは、主に腕の「動脈」と「静脈」をつないで、透析のときに針を刺しやすく、十分な血液を取り出せるようにした血管のことです。

シャントは毎回の透析で使うため、どうしてもトラブルが起こりやすい場所です。
・血流が悪くなる
・腫れてくる
・出血しやすくなる
・痛みやしびれが出てくる など

こうしたサインに早く気づいて、早めに受診・治療することで、シャントを長持ちさせ、透析の質も保つことができます。

このページでは、

  • 主なシャントトラブルの種類
  • トラブルの原因
  • 放置すると起こりうる症状やリスク
  • 当院で行っている主な対応
  • 「どのタイミングで受診すべきか」の目安

を、なるべくわかりやすくご説明します。

※ここでお伝えする内容は「一般的なお話」です。実際の治療方針は、必ず担当の先生とご相談ください。

2. よくあるシャントトラブル一覧

シャントに起こりやすい主なトラブルには、次のようなものがあります。

  • シャントが「つまる」「血が流れにくい」
  • シャントが「腫れる」「こぶのようにふくらむ」
  • シャントからの「出血がとまらない」
  • シャント部の「赤み・痛み・熱っぽさ(感染)」
  • 手や指の「冷たさ・しびれ・色の変化」
  • 腕の「むくみ」や「だるさ」が強い
  • 「動悸・息切れ」など、心臓への負担が心配な場合
  • 透析中の穿刺部の内出血・あざ・痛み

以下で、それぞれについて詳しくご説明します。

3. シャントがつまる・血流が悪くなるトラブル(狭窄・閉塞/シャントが触れなくなる など)

3-1. どんなトラブル?

  • シャントの血管が細くなったり(狭窄)、血の塊でふさがったり(閉塞)して、血の流れが悪くなる・止まる状態です。
  • 手で触ったときの「ドクドク(スリル)」が弱くなったり、触れなくなったりします。
  • 透析中に「脱血不良」や「静脈圧上昇」と言われることもあります。

3-2. 主な原因

  • シャントに長年負担がかかることによる血管の変化
  • 同じ場所へのくり返しの穿刺
  • 血圧が低い状態が続く、脱水ぎみ
  • 血液が固まりやすい体質 など

3-3. 主な症状・リスク

  • スリルが弱い・触れない
  • シャーというシャント音が弱くなった、音が変わった
  • 透析中に脱血がうまくいかない
  • シャント側の腕がむくむ・痛む
  • 閉塞すると透析自体ができなくなり、新しいシャントを作り直さなければならないこともあります。

3-4. 主な対応・治療方法

  • シャントエコーなどの検査で、狭くなっている場所を詳しく調べます。
  • 多くの場合、バルーン(風船)で血管を広げるカテーテル治療(PTA)が行われます。
  • 場合によっては、シャントの作り直しなどの手術が必要になることもあります。

3-5. 受診のタイミング

できるだけ早めの受診が大切です。

  • スリルが急に弱くなった・触れなくなった
  • シャント音が急に変わった
  • 透析施設で「血流が出にくい」「狭窄が疑わしい」と言われた

こうしたときは、数日以内を目安に受診をおすすめします。
特に、スリルがまったく触れない場合は、できるだけ当日中に相談してください。

4. シャント部分のふくらみ・こぶ(動脈瘤・瘤状変化)

4-1. どんなトラブル?

シャントの一部が、こぶのように大きくふくらんでくる状態です。長く使ったシャントでよく見られます。

4-2. 主な原因

  • 同じ場所に何度も穿刺する
  • シャントの血流が多すぎる
  • 血管壁が弱くなっている など

4-3. 主な症状・リスク

  • 大きなこぶのようなふくらみ
  • 皮膚が薄く、テカテカと光って見える
  • 小さなかさぶたが繰り返しできる、出血する
  • 放置すると、皮膚が破れて大出血を起こす危険があります。

4-4. 主な対応・治療方法

  • エコー検査で、こぶの中の状態(血流・血栓)を確認します。
  • 穿刺する場所を変える、シャントの血流を調整する、こぶの部分を手術で修復する などの方法があります。
  • 状態によっては、こぶの部分を含めてシャントを作り直すこともあります。

4-5. 受診のタイミング

次のようなときは、早めの受診(目安:1~2週間以内)をおすすめします。

  • こぶがだんだん大きくなってきた
  • 皮膚が薄くなり、破れそうで心配
  • こぶの上に小さな出血やかさぶたを繰り返す

皮膚が破れて出血した場合は「緊急」の対応が必要です(「12. 緊急受診」の項目もご参照ください)。

5. シャントからの出血トラブル

5-1. どんなトラブル?

  • 透析のあと、針を抜いた場所からなかなか血が止まらない
  • 家でふとした拍子にシャントから血が出てきて、じわじわ出ている・噴き出すように出てくる など

5-2. 主な原因

  • 血液をサラサラにする薬(抗凝固薬・抗血小板薬)の影響
  • 針の抜き方・止血方法が十分でない
  • シャントの血管や皮膚が弱くなっている(動脈瘤など)
  • 血圧が高い など

5-3. 起こりうるリスク

ガーゼやタオルがすぐに血で真っ赤になるほど出血した場合、命にかかわるほどの大量出血になることがあります。
夜間の寝ている間の出血など、気づくのが遅れるケースは特に注意が必要です。

5-4. 応急処置のしかた(患者さん・ご家族向け)

  1. 清潔なガーゼやタオルで、出血している場所をしっかり押さえます。
  2. 可能であれば、シャント側の腕を心臓より高い位置に上げます。
  3. 10~15分程度、圧迫を続けます(途中で何度もガーゼをめくらないことが大切です)。

※腕の根元を強くひもで縛ると、血管を傷めたり、手の血流が途絶える危険があります。救急隊や医師の指示がない限り、避けてください。

5-5. すぐに救急受診が必要なケース/当院への連絡の目安

次のような場合は、迷わず救急車を呼ぶことをおすすめします。

  • 圧迫しても15分以上、血が止まらない
  • タオルやガーゼが短時間で何枚も真っ赤になる
  • 血が「ピューッ」と勢いよく噴き出している
  • 本人がぐったりしている・意識がもうろうとしている

そこまでひどくない場合でも、

  • 出血を繰り返す
  • 止血に時間がかかるようになってきた

といったときは、近日中(できれば数日以内)に当院や透析施設へご相談ください。

6. シャント部の赤み・痛み・熱っぽさ(感染)

6-1. どんなトラブル?

  • 針を刺す周りに赤み、腫れ、熱っぽさ、痛みが出る
  • うみが出る、においが気になる
  • 発熱・全身のだるさを伴う場合もあります。

6-2. 主な原因

  • 穿刺部から細菌が入り込む
  • 皮膚の傷や湿疹からの感染
  • こぶ状にふくらんだ部分(動脈瘤)の皮膚トラブル など

6-3. 起こりうる症状・リスク

  • 局所の強い痛み・腫れ
  • 高熱・悪寒・全身のだるさ
  • 放置すると、血液の中まで菌が広がる(敗血症)危険があります。

6-4. 主な対応・治療方法

  • 採血やエコーなどで状態を確認します。
  • 抗生剤(飲み薬・点滴)による治療を行います。
  • うみがたまっている場合は、切開・排膿が必要になることもあります。
  • 状態によっては、感染した部分を含めてシャントを作り直すこともあります。

6-5. 受診のタイミング

次のようなときは、当日~翌日中の受診をおすすめします。

  • シャント部の赤み・痛み・熱っぽさが強い
  • うみが出ている
  • 37.5℃以上の発熱が続く

38℃以上の高熱や悪寒、急な悪化がある場合は、救急受診の対象となります。

7. 手や指の冷たさ・しびれ・色の変化(スチール症候群など)

7-1. どんなトラブル?

シャントに血流がたくさん流れすぎて、手や指の血流が不足してしまう状態です。
これを「スチール症候群」と呼ぶことがあります。

7-2. 主な原因

  • シャントの血流が多すぎる
  • 動脈硬化や糖尿病による血管の狭窄
  • 手首より上の位置に作ったシャント など

7-3. 主な症状・リスク

  • 手や指が冷たい、白っぽい/紫色っぽい
  • 指先のしびれ・痛み
  • 傷が治りにくい
  • 進行すると、指先の潰瘍・壊死(黒くなる)につながることがあります。

7-4. 主な対応・治療方法

  • エコーや血流の検査で、手先への血流の状態を確認します。
  • シャントの血流を調整する手術(流量を減らす・血流の経路を変える など)が検討されます。
  • 場合によっては、別の場所にシャントを作り直すこともあります。

7-5. 受診のタイミング

次のような症状がある場合は、早め(目安:1週間以内)に血管外科受診をおすすめします。

  • 手や指が冷たい・しびれる状態が続く
  • 手の色が左右で違う
  • 軽い痛みが続く

安静にしていても強い痛みがある、指先の色が黒くなってきたといった場合は、緊急の受診が必要です。

8. 腕のむくみ・だるさ・血管の浮き(静脈うっ滞・狭窄など)

8-1. どんなトラブル?

シャント側の腕や手が、一方だけむくんで太く見える、首や胸のほうまで血管が浮き上がって見える、腕がだるく、重い感じがする…。
これは、シャントから心臓へ戻る静脈がどこかで狭くなり、血液がうっ滞している状態(静脈高血圧)のことがあります。

8-2. 主な原因

  • 過去に鎖骨周辺の静脈にカテーテルを入れていた
  • 心臓ペースメーカーや中心静脈ポートなどによる血管の狭窄
  • 長期間のシャント使用による血管変化 など

8-3. 主な症状・リスク

  • 腕や手の著明なむくみ
  • 皮膚のつっぱり感や痛み
  • 透析中に静脈圧が高くなる
  • 放置すると、皮膚の変色・潰瘍の原因になることがあります。

8-4. 主な対応・治療方法

  • エコーや造影検査で、どこが狭くなっているかを確認します。
  • 狭窄部をバルーンで広げるカテーテル治療(PTA)や、ステント留置が行われることもあります。
  • 場合によっては、シャントの場所を変更する必要が出てきます。

8-5. 受診のタイミング

  • ゆっくりとしたむくみの増悪 → 数日~1週間以内の受診
  • 急に腕がパンパンに腫れた、強い痛みがある → 早めの受診、場合によっては救急受診を検討してください。

9. 動悸・息切れなど心臓への負担(高流量シャントなど)

9-1. どんなトラブル?

シャントの血流が多すぎると、心臓が常にたくさんの血液を送り出す必要があり、心臓に負担がかかります。
これを「高流量シャント」といい、心不全の原因・悪化要因になることがあります。

9-2. 主な原因

  • 太い血管で作られたシャント
  • 長年の使用で血管が太くなり、血流が増えている
  • もともと心臓に持病がある方 など

9-3. 主な症状・リスク

  • 階段や坂道での息切れ
  • 動悸・胸のドキドキ
  • むくみ、体重増加(心不全による水分貯留)
  • 進行すると、安静時の呼吸困難や胸水・心不全の増悪をきたします。

9-4. 主な対応・治療方法

  • 心エコー検査やシャント血流量の測定を行い、心臓への負担を評価します。
  • 循環器内科と連携し、心不全の治療と並行して、シャント血流を減らす手術やシャントの再建などを検討することがあります。

9-5. 受診のタイミング

  • 動悸や息切れが新たに出てきた
  • 以前より息切れが強くなった

このような場合は、早め(1~2週間以内)に主治医や当院へご相談ください。
夜間に横になると息が苦しい、少し動くだけで息切れがひどい、胸痛がある場合は、救急受診が必要なサインです。

10. 透析中の穿刺部トラブル(内出血・あざ・痛みなど)

10-1. どんなトラブル?

  • 針が血管の外に漏れてしまい、腕に内出血(あざ)が広がる
  • 穿刺部周辺が硬くしこりのようになる
  • 針を刺すときに強い痛みが出る など

10-2. 主な原因

  • 血管の外へ少しずれて針が入った
  • 血管壁がもろくなっている
  • 止血が十分でなかった
  • 抗凝固薬などで血が止まりにくい状態 など

10-3. 主な症状・リスク

  • 皮下出血による痛み・はれ
  • 大きな血の塊(血腫)ができてしまうと、皮膚の壊死や感染の原因になることがあります。

10-4. 主な対応・治療方法

  • 小さなあざ → 冷やしたり、時間とともに自然に吸収されることが多いです。
  • 大きな血腫 → エコーで状態を確認し、場合によっては針で吸い取ったり、手術的な処置が必要になることがあります。
  • 穿刺方法の見直し(穿刺部位の変更、針のサイズや角度の調整)も大切です。

10-5. 受診のタイミング

まずは透析施設の先生・看護師にご相談ください。

  • あざがどんどん広がる
  • 腫れが強く、痛みで腕が動かしにくい
  • 皮膚がピンと張って白くなっている

といった場合は、早めに血管外科の受診もご検討ください。

11. 日頃からできる「シャント自己チェック」のポイント

シャントトラブルを早く見つけるために、ご自宅でのセルフチェックがとても大切です。

11-1. 毎日みてほしいポイント

1)触る(スリルの確認)

  • シャントの部分を指でそっと触り、「ドクドク」「ブルブル」と振動を感じるかを確かめます。
  • いつもより弱い、まったく触れないときは要注意です。

2)見る(見た目の変化)

  • 腫れ・赤み・傷・こぶの大きさ
  • 皮膚が薄くなっていないか、光っていないか
  • 出血しやすくなっていないか

3)感じる(痛み・しびれ)

  • シャント周りの痛み
  • 手の冷たさ・しびれ
  • だるさ・むくみ

11-2. チェックのタイミング

毎日、できれば入浴前後など決まった時間帯に確認すると変化に気づきやすくなります。
「前と比べてどうか」を意識することがポイントです。

11-3. 「いつもと違う」と感じたときの行動の目安

  • 軽い違和感 → まずは透析施設で相談
  • スリルが弱い・なくなった/強い痛み・赤み → 数日以内に血管外科受診
  • 出血が止まりにくい・手の色が変わる → 緊急の可能性あり(下記参照)

12. こんな症状があれば「緊急」受診を考えてください

次のような症状は、救急車を呼ぶ、もしくはすぐに救急外来を受診すべきサインです。

  • 圧迫しても15分以上止まらない出血
  • シャントから血が噴き出している
  • スリルが突然まったく触れなくなり、腕が急に腫れて痛む
  • 手や指が急に白く(または紫色に)なり、強い痛みがある
  • 38℃以上の高熱と悪寒、ぐったりしている
  • ひどい息切れや胸痛、横になると息が苦しい

こうした症状がある場合は、迷わず119番通報をしてください。

13. 当院でのシャントトラブルへの対応について

当院では、シャントトラブルに対して次のような診療を行っています。

  • シャントエコー(超音波)による血流評価
  • シャント狭窄・閉塞に対するカテーテル治療(PTA)
  • 動脈瘤化したシャントやスチール症候群などに対する手術
  • 静脈うっ滞(腕のむくみ)や高流量シャントの評価・治療
  • 透析施設の先生方と連携したフォローアップ

他院の透析施設に通院中の方でも、シャントだけのセカンドオピニオン・ご相談をお受けしています。
まずはお気軽にお問い合わせください。

14. 受診をご希望の方へ(予約方法・持ち物のご案内)

受診の際は、可能であれば次のものをご準備ください。

  • 現在通院中の透析施設からの紹介状(なくても受診は可能ですが、あると診療がスムーズです)
  • 透析条件がわかるもの(透析サマリー、処方内容など)
  • お薬手帳
  • 健康保険証・各種医療証

当院では説明を丁寧に行い、疑問に寄り添いながら最適な治療方法をご提案しています。
どのような段階でもお気軽にご相談ください。

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