下肢静脈瘤の予防法|自分でできるセルフケア・弾性ストッキング活用術
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下肢静脈瘤の予防法|自分でできるセルフケア・弾性ストッキング活用術
下肢静脈瘤は、足の血管がボコボコと浮き出たり、だるさ・むくみ・こむら返りなどの症状が出る病気です。命に関わることは少ないものの、放っておくと見た目の悩みだけでなく、皮膚炎や色素沈着など日常生活のつらさにつながることがあります。
一方で、生活習慣の工夫やセルフケアで、進行を遅らせたり症状を軽くしたりすることは十分に可能です。
このページでは、下肢静脈瘤の予防法や弾性ストッキングの使い方、受診の目安について、わかりやすくご紹介します。
私たちの足の静脈には、血液が下から上(足から心臓)へ戻るように、逆流を防ぐ「弁」がついています。
この弁が弱くなったり壊れたりすると、血液が足にたまってしまい、静脈がだんだんと膨らんで「下肢静脈瘤」となります。
原因としては、
などが挙げられます。
次の項目に当てはまるものが多いほど、下肢静脈瘤になりやすい、または悪化しやすい傾向があります。
✔仕事が多い(看護師・美容師・販売職など)
✔デスクワークや車の運転で、座りっぱなしの時間が長い
✔妊娠・出産の経験がある
✔40代以降である
✔ご家族に「足の血管がボコボコしている人(静脈瘤の方)」がいる
✔運動不足ぎみ
✔体重が増えやすい・肥満ぎみ
✔きついガードルやスキニーパンツ、締め付けの強い靴下をよく履く
ひとつでも当てはまる方は、早めに予防を始めることで、将来の症状悪化を抑えられる可能性があります。
長時間同じ姿勢でいると、血液が足にたまりやすくなります。デスクワーク中でもできる簡単な運動を取り入れましょう。
1時間に1回程度を目安に、こまめに動かしてあげることが大切です。
ふくらはぎは「第二の心臓」とも呼ばれ、血液を心臓に押し戻すポンプの役割をしています。
1日20〜30分程度のウォーキングが理想ですが、
といった工夫から始めても十分です。
歩幅を少し広く、かかとからつま先へ体重を移すイメージで歩くと、ふくらはぎがよく動きます。
むくみやだるさが気になる方は、寝る前や帰宅後に足を心臓より少し高くして5〜10分休むだけでも、血液やリンパの流れが改善しやすくなります。
クッションや丸めたタオルなどを足の下に置いてみてください。
立ち仕事の方:
デスクワークの方:
足を組む姿勢は、骨盤のゆがみだけでなく、股関節や膝周りの血流を妨げる原因にもなります。
長時間足を組んで座る習慣がある方は、
など、少しずつ姿勢を整えていくことも予防につながります。
弾性ストッキング(医療用着圧ソックス)は、足首から上に向かって段階的に圧力をかけることで、血液が下にたまるのを防ぎ、心臓への血液の戻りを助けてくれます。
市販の着圧ソックスは「むくみケア」目的のものが多く、圧の強さやかかり方がまちまちです。
医療用弾性ストッキングは、医学的な根拠に基づいて圧の強さや分布が設計されているため、適切に使用することで予防効果が期待できます。
サイズが合わないストッキングは、かえって血流を悪くすることもあります。
ふくらはぎや太ももの太さ、足首の太さを測ったうえで、医師やスタッフと相談しながら選ぶことをおすすめします。
無理に履き続ける必要はありません。次のようなときはいったん中止して、医師に相談しましょう。
「合っていないかも?」と感じたら、そのまま頑張り続けずにご相談ください。
次のような服装は、足の血流を妨げる原因になることがあります。
長時間続ける場合は、少しゆとりのあるサイズにするなど、締め付けすぎに注意しましょう。
ヒールの高い靴はふくらはぎの動きを制限し、血流の悪化につながることがあります。
一方で、ペタンコ靴でもクッション性がないと足の疲れや痛みの原因になります。
適度な高さ(3〜4cm程度)のかかとと、クッション性のある靴底を持つスニーカーやパンプスがおすすめです。
シャワーだけで済ませず、可能な範囲で湯船に浸かる習慣をつけましょう。
ぬるめのお湯にゆっくり浸かることで、ふくらはぎの血流が良くなり、むくみや冷えの改善にもつながります。
このような小さな工夫だけでも、翌朝の足の軽さが変わってくることがあります。
妊娠中は、
といった理由から、足の静脈に負担がかかりやすい状態になります。
妊娠中の弾性ストッキングは、むくみや静脈瘤の予防に役立つことがありますが、お腹や足への圧のかかり方に注意が必要です。
使用を検討される場合は、必ず主治医や専門医に相談し、妊婦さん用のタイプやサイズを選びましょう。
出産後に静脈瘤が軽くなる方もいますが、そのまま残ってしまう方も少なくありません。
産後も、無理のない範囲でウォーキングや足を高くして休む習慣を続けていくことが大切です。
次のような症状がある場合は、セルフケアだけでは改善が難しい可能性があります。
特に、片側だけに強い腫れや痛みが出る場合は、血栓(血のかたまり)ができている可能性もあり、注意が必要です。
「まだ病院に行くほどでは…」と我慢せず、早めに専門医へ相談することをおすすめします。
当院では、まず超音波検査(エコー)を行い、どの静脈がどの程度弱っているか、逆流が起きているかを詳しく評価します。
そのうえで、
といった選択肢から、患者さん一人ひとりの症状・生活スタイルに合わせた治療方法をご提案します。
傷が小さく、痛みや体への負担が少ない治療にも力を入れておりますので、治療後も普段の生活に戻りやすいことが特徴です。
下肢静脈瘤は、完全に防ぐことが難しい病気ではありますが、生活習慣の工夫と適切な治療を組み合わせることで、進行を遅らせたり、つらい症状を大きく軽減したりすることができます。
「年齢のせいだから仕方ない」と我慢される方も多いですが、きちんと診断・治療することで、見た目の悩みや足のだるさが軽くなるケースも少なくありません。
気になる症状がある方、予防の仕方を知りたい方は、どうぞお気軽にご相談ください。
当院は、検査から日帰り治療、その後のフォローまで、患者さんと一緒に歩む診療を心がけています。
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